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【Open Access Week 2012 特別企画】突撃!となりの研究室 3日目

Open Access Week 2012 特別企画として、5日間連続、研究者インタビューを実施いたしました。

3日目は、有床義歯補綴学・上田先生と山田先生の研究室にお邪魔して、お話を聞いてきました。

(左下)上田先生(右下)山田先生(左上)インタビューに同行した鎌田さん(右上)石塚さん

1. オープンアクセスを実現する場合、オープンアクセス雑誌とリポジトリ登録可能な雑誌のどちらを選びますか?

自分の研究分野の雑誌で出来るだけインパクトファクターが高いものに投稿したいと考えているので、あまりオープンアクセスかどうかを考えては投稿していません。投稿した雑誌が、たまたまリポジトリ登録可能だというのが現状です。それなりに名前が通っていて、自分の投稿の範疇に入りそうなオープンアクセス雑誌はまだ少ないですし、オープンアクセスとするのにお金も必要になります。

2.リポジトリは無料でオープンアクセスを実現出来ますが、出版社版原稿ではなく著者版原稿が登録可能という場合が多いと思います。その点については、いかがお考えですか?

論文を執筆する観点でいうと、著者版原稿の方が出版社版原稿よりも情報量が多いと思います。読み物としては、出版社版原稿の方がまとまっていて読み易いのですが、ある雑誌に投稿しようとした際に原稿の書式や余白、Figureの大きさなども編集される前の原稿なので読み解くことが出来ます。出版社版原稿は購入すると手に入りますが、著者版原稿は著者が提供しない限り見ることが出来ません。本来の投稿者の思いは著者版原稿に顕われています。ですが、編集の段階でカットされたり訂正されたり、レビューの過程が出版社版原稿と見比べることから分かるので面白いのです。私もリポジトリに何点か論文を登録していますが、Accept原稿のサンプルとしても使ってもらえると思っています。

3.オープンアクセス雑誌そのものについては、どのようにお考えですか?

オープンアクセス雑誌は、今後発展してほしいと思います。オープンアクセスはサイエンスの本質ですし、研究者として出来るだけ自分の成果を広めたいという思いがあります。ある特定の雑誌に投稿すると、その出版社の営利活動を助けることになりますが、オープンアクセスであれば、例えば公的な研究費・補助金などで行った研究の場合には無料で公開出来るので理にかなっていると思います。投稿する側としては、多くの人に見てもらいたいのでオープンアクセスにしてほしいと思いますが、資金、インフラ整備が課題になるかと思います。 

4.先生の日々取り組まれている研究について教えてください!

インプラントのチタン表面に軟組織(歯肉や皮膚)をくっつけるための表面の開発をしています。 また、ひとつの生体材料に色々な機能を付与した多機能材料を「スマートマテリアル」と呼びますが、ある複合物を使った、それが骨に対する生体材料に多機能性を付与することが出来るのではないかということで、化合物を使った骨生体材料のスマートバイオマテリアル化についての研究も進めています。

5.移転後の図書館について何かご意見はありますか?

家やコーヒーショップで執筆活動をすることが多いので、早く学外で電子ジャーナルが閲覧出来る様に整備してほしいです。あとは、近隣大学図書館との相互利用を視野に入れてほしいです。

6.ちなみに、冊子体で雑誌をご覧になることはどのくらいありますか?

冊子体を見ることは正直ほとんどありませんが、なくしてはいけないと思います。例えばですが、論文投稿時の戦略として、指導医と相談して、ある雑誌に投稿すると狙いを定めた時に「この雑誌がどういったテーマをどのくらいの割合で扱っているか?」―例えばJDRだとclinical research 半分、basic research半分になるなど―、自分で冊子を見て分析する必要があります。PDF(電子ジャーナル)だと一覧性がないので、初めて投稿する雑誌については図書館に行って冊子体をぱらぱらと見ることになります。 商業誌は、電子ジャーナルだと見ない、というか冊子体の方が良いです。アクセスの仕方の違いだと思いますが、学術論文の場合は「雑誌が見たい」というよりは「この論文が読みたい」ということの方が多く、雑誌を最初から最後まで読むことはまずありません。その雑誌がどんな雑誌なのか?ということを掴むには冊子体は有効ですが、目次を観てトレンドを見るという読み方を今はしません。しかし商業誌は週刊誌のような感覚で、国内のトレンドやトレンドメーカーを知るためにぱらぱらと目的なく読みます。

上田先生、山田先生、ありがとうございました。